公開:2001年
製作国:カナダ/アメリカ
監督:リドリー・スコット
原作:トマス・ハリス
脚本:デヴィッド・マメット
出演:アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア ゲイリー・オールドマン
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前作で南米のように見える風景の中に消えていった博士、その続き。
こいつは公開当時、先に原作を読んでいて、ラストは変えてあるらしいという情報も知っていて観た。
で、当時の感想は悪くないけどやっぱり原作のほうがいいなあと。
原作を読んでいない友人はすごく楽しめたようだった。
んで今回再び観直してみたんですが、全然いいです。
前作と原作と、ずいぶんプレッシャーがあっただろうにそこはさすがのリドリー・スコット、
ちゃんと面白くしていた。
ただラストはね、ラストは原作がやっぱりいいです。
いいですが大人の事情的に、ラストを変えないとベストセラーな原作を読んだ読者を映画館に呼び込むことができなかっただろうから、ラストは変えざるを得なかったとしましょう。
んで改変されたラストが優れているのは、
ラブストーリーである本質はちゃんと原作を周到しているところです。
ラブストーリーなんだって、これ。
必要なので言ってしまうと、原作のほうのラストはクラリスとレクター博士はふたりで消えてしまいます。
FBIが屋敷にたどり着いた時はふたりは消えてしまっていた、何処かへ。
そして5、6年後にバーニーが、ブラジルかメキシコか南米のどこかのオペラハウスから正装した美しい男女、博士とクラリスによく似た男女が出てくるのを目撃する。
博士には変わらず多額の懸賞金がかけられています。
でもバーニーは「よく似た人を見た。よく似ていたな…」と心の中でつぶやくにとどめる、深追いはしない。
男女はオペラの夜に消えてゆく、そういうラストです。
劇中では博士の台詞になっている、
「ビューロに君は恋をしている。でもビューロは君の想いに答えてくれない、いつも片思いだ」
これは原作では、クラリスの上司であるクロフォードの台詞としてでてきます。
いずれにせよこの台詞はお話に入れる必要がある、重要な台詞です。
ビューロ(FBIの通称なんだろうな)は過酷な任務を課する、
もうプライベートを犠牲にしないとこなせないような任務を課する、
職員は対価以上に熱意だけを燃料に任務に当たる、
なのに仕事以外のすべてをなげうって働いてきた職員に、FBI という組織はあまりにも冷酷。
あれだけの功績をあげながら「出る杭は打たれる」杭になってしまったクラリスへ博士がいうわけです。
クラリスはもはや失うものが何もないのに、FBIに残るか?
あるいは、だからといって殺人犯と手を取り合って消えてしまうような女か?
かなり微妙なところですが、原作の博士と消えるラストも、
あくまでも博士を捕らえる姿勢を崩さない映画のほうのラストも、
どっちもありだな、と思える。
細かいことをいうなら、
・フィレンツェのシーンではイタリア語で会話することがほとんどない
・博士が手錠にあっさりひっかかって「逃してくれ」なんて言うか?
この2つが「アラ」といえばですが、
そういうのを気にして大筋の面白さを失いたくない。
原作から補完できるちょっとしたコネタも。
・バーニーは優しさではなく、食べるために鳩をひろった
…びっくりでしょう。たしかに優しいバーニーなんですが、
あの鳩は、弔うためではなく食べるために拾ったんですよ。
そこがバーニーのちょっとした卑しさを(博士の遺品をオークションにかけたりする)表しています。
・メイスンは少年の涙をのむ男
少年愛者であるところのメイスンは、屋敷に小さな男の子を何人か囲っていて、
ひどくサティスティックな言葉で傷つける。
その少年が泣くと、あのお付きの医師がすばやくスポイトで涙を吸い取って、
メイスンはそれを飲むのを至上の喜びとしている、そういう変態。
劇場で観た記憶では確かにそういうシーンがあったと思うのだが、DVDからは端折られていた。
・そもそも豚はレクターを食べなかった
これは映画で気がついたんですが、クラリスに救出されなくても、そもそも豚は放たれても博士の足下をうろうろするだけで噛み付きもしなかった。
クラリスに助けられたというわけではないのです。
だからラストの「逃がしてくれ」は「らしくないなあ」と。
でもあの「らしくない」乱闘シーンで博士の言う、
「地球を半周して君が走るのを見に来た」
という口説き文句にはちょっとくらっとめまいがします。
実際クラリスが強制的に休暇を与えられても早朝の走り込みをしているとき、
ふっと後ろに人影が映る。
クラリスが振り向くと、もう人影はない。
ラブストーリーなんですって。
前作へのオマージュか、こちらにも触れそうで触れない、
レクター博士がメリーゴーランドからクラリスの髪に手を伸ばしてほんのすこし揺らす、
というスローモーションのシーンが挿入されております。
前作とともにそういうシーンは原作にはないのですが、
「恋仲だと噂されるぞ」は原作通り。
「レクターはあのFBIの女を殺したいのか、食べたいのか、寝たいのか」
「たぶんその全部だろう」
さて私が思うのは、なぜクラリスが博士にとって特別な女性になったのか?です。
HANNIBAL